世界中が欲した 多種多様なインドのハーブ・スパイス
広大な面積を持ち、地形と気候が多彩なインドの大陸は、世界で最も植物の種類が多彩な土地。そこに育つ植物の数は1万種類以上といわれます。なかでも香りや効能に優れたコショウやナツメ、チョウジなどの香辛料は希少品とされ、紀元前6世紀ごろ東西の交通の要衝として栄えたガンダーラには、世界中から香辛料を求める人々が集まりました。かのローマ帝国からも商人がひっきりなしに訪れ、金や銀と引き換えに東洋の香辛料を持ち帰ったのです。
植物のビタミンやミネラル、糖質は、昆虫から動物までほとんどの生物に必要な栄養成分です。草食動物は体調に合わせ食べる草を変え、肉食動物も体調をコントロールするために草を食べます。人も例外ではなく、古来より病気の回復や天敵の予防にさまざまな植物を利用し、世界各国で薬草(=ハーブ)を用いる伝統医学が発達してきました。そもそも現代利用されている医薬品のほとんどが、世界各地の伝統医学に由来するものなのですから。
アーユルヴェーダでは、「医学的価値を持たない植物はない」と考えます。5000年以上にわたる長い歴史のなかで、多種多様な植物をもとに絶え間なく作り出されたレシピから、医師たちの経験と医学的な検証に基づいて、効果があると思われるものが現在まで伝えられています。インドの古代の医学書には約1000種類もの植物とその利用法が紹介され、アーユルヴェーダの熟練医師は、現在でもこの処方に基づき、新しいレシピを加えながら医療現場に取り入れています。実際に、アーユルヴェーダの処方により高血圧やがん、HIVといった難病が治癒したとの報告は少なくなく、先進国でもこの有効成分の科学的検証が進められています。